複合機の前身はPPC複写機(コピー機)であり、その起源となる複写機の誕生経緯こそ、複合機の歴史そのものになります。
複写機の起源は、1779年にイギリス人の発明家、ジェームズ・ワットによって発明されました。インクが裏まで染み込みやすい薄い紙を使って紙から別の紙に内容を転写するという手法で、意外にも実用化が早く、最初に事務機として幅広く使われ、20世紀まで使用され続けました。当時は、元の原稿はインクまみれとなり、原稿がコピー後に普通に使用できるものではありませんでした。
元の原稿がコピー後もそのまま使える複写機が実際に開発されたのは1951年のドイツです。ジアゾ式複写機と呼ばれ、元原稿と感光紙を密着させて、複写機内部を通過させながら紫外線を照射することで感光させます。湿式と乾式があり、感光は化学反応により発色する方法で、発色させる紙の色に青色や黒色がありましたが、当時は青色の紙が主流だったために、通称「青焼」と呼ばれました。
現在のように普通紙にコピーできるPPC複写機は、1938年にアメリカ人の発明家、チェスター・F・カールソンによってゼログラフィと呼ばれる基本技術が確立したことが始まりで、長年の改良を重ね、1959年、アメリカで世界初の事務用コピー機が誕生します。この時の商品名がゼロックスだったことから、現在でもコピー機は欧米ではゼロックスと呼ばれています。
日本国内では、1960年後半頃から、ゼロックスとミタ(現:京セラ)の2大コピー機メーカーが市場を賑わせていました。1970年代後半には業務用ファクスが開発され、そのファクス機も普通紙対応へと進化しました。1980年後半頃から複写機もデジタル化と進化を遂げ、1990年前半には複写機とファクス機能が一体型となった、いわゆる複合機が登場しました。以降、プリンタ機能やスキャナ機能等がつぎつぎに搭載され、現在のような複合機スタイルとなっています。